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その瞬間。車が、突っ込んだ。
「!!」
車にぶつかられて、オレの、特別な姫君の体が紅く染まる。
オレは声にならない声で必死に望美を呼び、そして駆け寄る。
「望美!!」
オレは横たわる望美の手を握った。紅い血が流れる望美の体からは少しずつ、体温が失われて行く。顔からは血の気が引いてきて……。
「望美!」
名を呼んでも、オレの愛しい姫君は返事をしてくれない。ただ、服とその紫苑の髪を紅に染めるだけで、何も、返してはくれない。
ダメだ……
死なないでくれ……
望美……
お前を失いたくない……
オレの、ただ一人の愛しい姫君を失いたくは……
「携帯……」
オレは望美の血で紅く濡れた手で携帯を取り出した。以前、望美に教えてもらった“救急車”と言うものを呼ぶために。
「死ぬなよ……頼む……っ……“救急車”を呼ぶからっ」
瞳を閉ざした望美に向かって言いながら、“119”番をダイアルして電話をする。
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