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そしてそれから更に半刻ほど過ぎた。
「望美……」
あの部屋の前で望美を待ちたい。だが、貧血気味で体が言うことを聞かない。
望美の無事だけを祈り続けているところへ九郎達が入って来た。
「ヒノエ、望美が……」
普段涙を見せない九郎の目に、涙が浮かんでいる。どうしたって言うんだ。まさか望美に何か。
「望美が……何だ……?」
一瞬、嫌な予感がして、頭で、それを否定する。
そんなのは、嫌だ。そんなハズがない。数刻前まで隣で笑っていたんだから、と。
オレは重い体を無理矢理起こした。
「神子は」
リズ先生が続ける。
聞きたい。だが、怖い。失ってしまったんじゃないかと言う不安で、胸が痛んだ。
「一命を、取り止めたそうだ。今は別の病室で眠っている」
続いた言葉に胸の痛みがスッと引いた。
将臣も譲も、九郎も朔も、リズ先生も、敦盛も、景時も、皆、瞳に涙を溜めていた。あの弁慶も。
「暫くすれば目も覚めるでしょう。望美さんは、助かったんです。こちらの世界の医術はとても優れているようですね」
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