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下校時間を告げるチャイムが鳴る。
「椎果ー!途中まで帰ろう!」
吹奏楽の楽譜を片手に、明日香がこちらに駆け寄って来る。
「おっけー!ちょっと待っててー!」
まだ机上に乗っていた教科書やらノートやらを鞄に押し込んで、急いで肩に掛けた。
ずっしりと重たい鞄の紐が、私の肩に食い込んで地味に痛い。
「あ〜、ほんと重い!」
「うちの学校くらいだよね、学校指定の鞄持たされてるの」
私立の学校だからなのか、鞄も靴下もベストも「校風を大事にしたい」とかいう校長だか何だかの方針によって、うちの高校は持ち物に指定のものが多い。
制服で選んだ自分が言うのもなんだが、見た目を重視しすぎて機能性に欠くのでは意味がないんじゃないかと思う。
「可愛いけどさあ〜、でもここに全部詰め込んだらほんとに重いんだよ!
リュックにしてほしかった!せめて!」
そんな下らない話をしながら、昇降口を抜けると、何やら外で女子が集まっているのが目に入った。
「なに、なんかあったのかな」
とりあえず明日香も椎果も一旦外に出る必要があったから、不思議に思いながらも女子の塊の方へ少しずつ近づいてゆく。
「えー、誰の彼氏かな?」
「結構かっこよくない?」
きゃっきゃと校門の方を見てざわついている女子の声が耳に入ってくる。
「なんか男の人?がいるみたい」
私がそう言うと、明日香は物珍しそうに
「あぁ、うち外部の人が外で待ってること滅多に無いもんね」
と正門に目を向けた。
普通、学校に用事のある人は正門ではなく西門の職員玄関の方から校内に入る。
椎果の高校は私立なので生徒数も多く、正門は下校時間には帰宅する生徒でごった返している。
混雑を避けるためにも、約束や待ち合わせの人は西門の方を使うことが暗黙の了解でもあるのだが。
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