傘が連れてきた恋

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「けど、俺も大学入る前はそうやって身構えてたっけね。実際行ったら気持ちなんて高校生くらいで止まってて、こんなもんって感じなんだけどさ」 私に目線を合わせながら、それでも懐かしむような目で私を見る彼は、やっぱり少し大人びて見える。 「そういえばさ、俺も…君と同じ高校だったんだよ」 「えっ!そうだったんですか?」 「今は俺の弟が通ってるんだけどさ。 …君、何年生?」 「高2です」 「お、偶然!俺の弟も高2なの」 ニカッと笑いながら世間は狭いね、なんて笑いながらふと前を見る。 「お兄さんは今何年生なんですか?」 「ははっ、なんかそのお兄さんって響きいいね。新鮮。俺も君と同じ2年生」 それから、彼が大学で心理学を勉強していることや、大学の近くには安くて美味しいカレー屋さんがあること、そこの店長さんの独特な喋り方が面白くて、講義中こっそり友達と真似していたら教授に怒られたこと、色んなことを話した。 歩き始めたばかりと思っていたけれど、話に花が咲くうちに、気がつけば駅もあと数10メートル程に近づいていた。 「あともうちょっとですね」 信号を渡ればもう駅だ。 「なんか思ったよりあっという間だったね」 信号を待つ間、少しの間沈黙する。 思いのほか楽しい時間が過ごせたから、なんとなく名残惜しい。 出来ればもう少しだけ、一緒に色んなことを話してみたかった。
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