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「こんなの……ヒック……こんなの酷すぎるよ……嫌だよ」
泣いているだけでは何も出来ないことも、ならないことも勇はよく知っている。
勇はヘタレだが、基本的にはどんなことに対しても自分が出来ることを全部出し切るのだ。
虐められていた時も、何とかしようとはしていた。
まぁ、この場合だけそれが完全に逆効果だったわけだが。
とにかく、勇はたとえそれがどんなに不可能に見えても、他の人が諦めるようなことでも、自分が出来る全てをぶつけて何とかしようとする。
だから、それが出来なかった時に勇は泣くのだ。
羞恥心も何もかもを投げ捨てて、自分の無力と悔しさを吐き出すために。
「勇はこいつを助けたいのか?」
オレはそんなこいつを、今目の前で女々しく涙を流すこいつを恥ずかしいやつだと思ったことはない。
「……うん」
出来ないと知っていることに向かって行くことは、オレには出来ないからだ。
馬鹿にしているわけではない。
本当に、本心から、オレは勇を凄い奴だと思っている。
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