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宿主が壊れてしまったので、蟲はそれを放棄してオレが開けた穴から逃げ出そうとしている。
「何かに使えそうだな」
人の手の指程の長細いミミズのような青紫色の蟲の動きを止めて掴み、先ほど胸を貫いた腕の指先から垂れる血を舐め取りながら周りを見渡した。
「遊び尽くしたか……セプテムは無事……なようだな」
「オェ、ゲェ……けぼっけほっ……うっ、申し訳ありません……ご、ご主人様」
ここに来た当初はまだ使えそうな家屋も多かったが、今はほぼ崩壊していて、だいたい30体の老若男女の屍がオレの周りで倒れている。
久しぶりに暴れられると思って昂揚していたので、『倒れている』というよりは『色々とぶちまけられている』といった方が正しいかもしれない。
おかげで借り物のローブが血と肉でべちゃべちゃだ。
「いや、たぶんそれがまともな反応だろうから構わない。だが、慣れてもらわないとな。後々お前にはオレの代わりに戦ってもらう予定なのだから」
頑張ったご褒美に頭でも撫でてやろうと残骸を踏みしめつつセプテムに近づく。
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