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一目惚れ
江戸・歌舞伎町
ここは昼間は普通の通りだが、夜になるとライトアップし男を魅了する通りへと変わる。
今日もこの通りにあの人がやって来る。
俺は湊月 飛燕(コウゲツ ヒエン)。
『桜吹雪』という店で唯一の男の花魁で、呼び名は燕(ツバメ)。
男なのになぜ花魁をしているかというと女顔で売れるからだそうだ。
正体が男だと分かっていても買ってくれる客は物好きだと俺は思う。
俺は毎晩この通りにやって来るあの人をただ遠くから眺めているだけ。
声をかけることすらできない。
本当はあの人と話をしたいけど、俺は一応店の売り物・・・
だから俺を指名してくれた人しか相手にできない。
だから・・・
「あの人が俺を買ってくれないかな・・・」
「こ~ら」
ポカッ!
「痛った~」
ボソッと呟いていた飛燕は突然叩かれた頭を擦りながら振り向いた。
後ろには同じ店で働く小夜がいた。
「何サボってんの、ちゃんと仕事しなさい」
「今は休憩中だよ」
「またそんなこと言ってお客さんの相手サボったでしょ、知ってんだからね」
「あ、もうバレてた?」
「バレバレ。おかげで番頭さんの機嫌が悪くなったわよ」
「げっ、最悪かも;」
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