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次の日から約束通り、夜闇と椿は毎晩 店にやって来るようになった。
二人が『桜吹雪』に通うようになってから三ヶ月が経ったある晩のこと。
「番頭、今日もあの二人は空いてるか?」
夜闇の問いに番頭は苦笑を浮かべると「実は・・・」と、口を開きかけたその時、上から悲鳴が聞こえた。
「な、何事だ!?」
上からドタドタと降りてくる複数の足音が聞こえた。
「番頭さん、大変や!燕と小夜が変なお客さんに襲われてます!」
「なんだって!?」
「なんや俺の嫁になれ、とか、君は僕だけの物、とかわけわからん事言うてはります;」
「しかもそのお客が刃物持ってるから助けたくても迂濶に近づけなくて;」
「今 桜姉さんが二人を庇ってます;」
次々に状況を説明する花魁たちは必死だった。
椿は場所を尋ねた。
「三階の左の一番奥の彼岸の間です;」
夜闇が目配りすると椿は頷いた。
「案内しろ」
「はい、こちらです!」
案内役の花魁の後を二人は追った。
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