魔王、はじめてのお出かけ

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さて、紅から解放された俺(の魂)は、さっきのエロい状態のまま戻されるはずだったんだが、俺が紅から拉致られてる間ずっと、俺の身体は気絶状態だった。 そんなもんだから慌てたセーレが医者やら何やらを呼び出して大騒ぎだったようだ。 お騒がせしてスイマセンね。お陰様で身体の方は無事です。魂はヒドい目に遭ったけど。 「本当に、ご無事で何よりです」 瞳を濡らしたセーレの本当に、本当に心配したような声のおかげで、目覚めてぼーっとしていた頭が少し覚醒した。 「心配かけたな」 こんな偉そうな台詞を吐いてはみるものの、瞼を赤く腫らした彼女を見ていたら、少しの罪悪感が出てきた。 「お身体の方はもう大丈夫なのですか?」 「まったく問題ない。むしろ前より良い」 20年もかけて前魔王と培われた信頼、愛情が────今、俺に向けられている。 今日偶然この世界に飛ばされてきた俺に、だ。 こんな余所者が彼女の親愛の情を一身に受けていいのだろうか? こうして甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼女を裏切っているのではないか? 「そうでございますか。それは安心致しました。それでは────」 たとえ、あの外道馬鹿女の仕業だとしても、彼女に真実を話し、俺はここを出て行くべきなのでは? そして、なんでセーレさんはメイド服を脱ぎ出しているんだ? そんな疑問、葛藤が、俺の頭の中を渦巻いていた。
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