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都心に近い駅は、深夜近くになっても人が溢れている。 太った人も痩せてる人もカッコいい人も皆、私と一緒で今から自宅に帰るんだよね。 皆一人一人、私と一緒で苦労してるんだよね。 私はそんな人達を横目に音楽プレーヤーから流れる曲に集中した。 アルバイトを始めたきっかけは、お金が欲しいという切実な願望だった。 高校入学と同時に始めて、もう半年になるコンビニのバイト。 夏休み終盤の8月、私のシフト量は同級生と比べて桁違いに多かった。 毎日毎日、バイトと自宅の通勤。 これじゃあまるで、友だちが一人も居なくて暇な子みたい。 そこまで考えつくと、とても虚しく乾いた笑いが口から抜けた。 多少の気味の悪い笑い声くらい、この人混みが、この足音が、どうかしてくれる。 私は再び乾いた声を口から出した。 高校一年の夏、この声が誰かにとどくことを期待していたのかも知れない。
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