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◆  秘封倶楽部の部室。ここには扉が一箇所だけ存在する。外に出る際には必ず通るであろう出入り口の扉だ。  左右に戸をスライドして開閉する引き戸タイプで、今私はその扉を開けた状態で取っ手の部分を強く握り締めている。  呼吸を整えてから私は慎重に首だけを部屋の外に出し、左から右へ空に線を描くように見渡してみる。  ――誰もいない。  私の目には何も映ることはなかった。そうしてなんとも知れぬ大きな悲しみの底に突き落とされる。  しかし、そんなことで立ち止まる私ではない。すぐさま沈んだ気持ちをリセットするために頭を横に振るう。  望みがなくなったわけではない。私は振り返り、そこにいる親友へ声をかける。 「メリー、そっちはどう?」  見るとメリーは、私が首までしか出せなかったの対し窓から上半身を乗り出して外を見ていた。もしものことを考えるとこちらが逆にヒヤヒヤしてしまう。  しかし、メリーの行動を私が止められるわけがない。物静かに見えて実は大胆、それが私の知るメリーなのだから。 「どうしようもないわよ。下手したら落ちちゃうかも」  わかっているなら危ないことはしないでほしい。安堵の溜息の後、うーん、と私は思わず声を漏らしていた。さてさて、どうしたものか。  密室という言葉がある。内部からの脱出、そして外部からの侵入も出来ない状態のことである。今、私達が置かれている状態というものがそれに近い。内部からの脱出、そしておそらく外部からの侵入も出来ないのだから。  しかし、それだけならまだマシだと思える。普通の密室なら最悪の場合は壁を破壊すれば済む。だが、今回はそういうわけにはいかない。厄介なことは別にある。  私は開けたままだった扉からもう一度外を見た。  そう、私達はこうして扉や窓を開けて外を見ることができる。これが普通とは違う理由だ。  ――外。  ――外?  果たして今私が見ている世界は外なのだろうか?  扉を開けた先にはただ真っ暗な世界。風もなければ音もしない。それは窓から見た外も同じだった。  現在、最も厄介なのはこの闇である。私達が部屋から出ようとすれば闇に阻まれてしまう。 「一旦、集合」 「はーい」  扉と窓をそれぞれ閉めてから、私達は部室の中央に集まった。
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