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――夢だから、見たい夢を見られない。
――夢だから、常識など存在しない。
――夢だから、決して叶わない。
夢の世界を自由に操れる人がいるならば、私は見てみたい。
彼女はそう言って、視線を私から本へと戻した。
やれやれだ。この光景を誰かが見ているのだとしたら、きっとそいつは笑っているのだろう。逃げることもできずに掌の上で踊らされる私達を見て――
「もはや籠の中の鳥ね」
そう言って私は力なく机に伏せる。
「かごめかごめでも歌いましょうか」
「どうせ後ろの正面は貴方なんでしょ、メリーさん?」
「そうとは限らないわよ。その扉を背にしている蓮子なら、真犯人が会いに来てくれるかもしれない」
「何? 今度は狐狗狸さんでもしようって言うの?」
怪奇現象には怪奇現象ということなのだろうか。私は降霊は好きじゃないわよ。
いや、この場合シュレディンガーの猫のほうがしっくりくる。開けなければ中身がどうなっているのかがわからない。中身。即ち私達だ。中身を見るために、誰かさんは扉を開けなければならない――この部屋、唯一の扉を。
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