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「危ないね。」 俺は素早く右手を横に振った。 パキッ! 包丁で氷を叩き切ったような音がしたかと思うと、大剣が横真っ二つに折れ、剣先が呆然と柄を掴む男の足の甲を地面に縫い付けた。 「っ!?」 残りの男達が動きを止めて驚きの視線を俺の右手に向ける。 右手にはいつの間にか深紅色の柄がない剥き出しの刀が握られていた。 「・・・東の大陸にある北方国と帝国の国境に小さな村があった。」 突然の俺の発言に意識のない者、あるいは戦意を失って立てずにいる者と無傷な者、全員が黙っていた。 静かな歩道に俺の声だけ響く。 「約三年前、帝国は国境にある小さな村に未来に帝国に災いをもたらすだろうと神託を受けた。」 無意識に俺は自分の右肩を掴む。 「それを恐れ領土戦争という、偽装の戦いを北方国に持ちかけ小さな村を巻き込み壊滅させた。」 ブチブチ… あまりの肩を握りしめたせいで服が破れ始めた。 「小さな村に住む村人は一人を残して全員死亡。最後の一人は戦利品として奴隷となった…」 右肩を掴んでいた手を力任せに引っ張り完全に引きちぎった。 現れた右肩の素肌には刺青、帝国の奴隷だけが彫られる剣と鎖の刺青があった。 「俺はルキフェル・シモン。今はなき名のない小さな村の最後の一人。」 瞬く間にこれだけの男達を打ち倒し、それでいて自分の身を語る俺の前に、無傷の男達は何を思ったか。
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