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揺れる炎、俺の目の前で彼女の胸から剣が突き出し血が噴き出る。
「・・・・・っ!!」
叫ぼうと口を開くが声は出なかった。
よろめく彼女はやがて地に倒れた。
俺は急いで彼女を抱きしめ……辺り一面が暗くなった。
俺はゆっくりと瞼を開く。身体中が汗まみれになってひどく寒い。
空はまだ暗く、星は輝き海は囁くように揺れている。
【極北王国ライオン】の港から【西大国ヒビモス】の港まで行く帆船に乗っているのを思い出した。
「・・・夢か。」
―何か嫌な予感がする。
俺は自然と刺青がある右肩をさすった。
※※※※※※※※※※※※※※※
【極北王国ライオン】港沿いにある街の宿に一人の男が入った。
墨みたいな黒くて長い髪が夜風に揺れ、白い左頬に海の怪物リヴァイアサンの刺青が青く光る。
背中には二本の剣と一本の曲刀を携えていた。
「・・・いらっしゃい。」
宿屋の親父は男を見た。
「夜遅いのでお泊まりですかな?」
男が醸し出す冷えた雰囲気に危険を感じた宿屋の親父はカウンターの裏に隠してある銃剣の柄を握る。
「・・・・・ここに、」
男が初めて口を開く。
「ここに一人の男が来なかったか?」
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