9/24
前へ
/30ページ
次へ
揺れる炎、俺の目の前で彼女の胸から剣が突き出し血が噴き出る。 「・・・・・っ!!」 叫ぼうと口を開くが声は出なかった。 よろめく彼女はやがて地に倒れた。 俺は急いで彼女を抱きしめ……辺り一面が暗くなった。 俺はゆっくりと瞼を開く。身体中が汗まみれになってひどく寒い。 空はまだ暗く、星は輝き海は囁くように揺れている。 【極北王国ライオン】の港から【西大国ヒビモス】の港まで行く帆船に乗っているのを思い出した。 「・・・夢か。」 ―何か嫌な予感がする。 俺は自然と刺青がある右肩をさすった。 ※※※※※※※※※※※※※※※ 【極北王国ライオン】港沿いにある街の宿に一人の男が入った。 墨みたいな黒くて長い髪が夜風に揺れ、白い左頬に海の怪物リヴァイアサンの刺青が青く光る。 背中には二本の剣と一本の曲刀を携えていた。 「・・・いらっしゃい。」 宿屋の親父は男を見た。 「夜遅いのでお泊まりですかな?」 男が醸し出す冷えた雰囲気に危険を感じた宿屋の親父はカウンターの裏に隠してある銃剣の柄を握る。 「・・・・・ここに、」 男が初めて口を開く。 「ここに一人の男が来なかったか?」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加