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【北極王国 ライオン】の地は夏のため雪が溶けて潤いに満ちている。
水は透き通り、山々は緑の衣を羽織だし、肌に触れるだけは冬の名残なのか少し涼しかった。
港沿いのこの街でも、漁港には大小様々の漁船や帆船がズラリと並び、帆船が上げた獅子の国旗が雄々しくたなびいている。
一日かけて海を船で渡った俺は眠気まなこをこすり、宿屋に入った。
「・・・・・腹が減った……」
誰に言うこともなくに呟き、空いていた椅子に腰を下ろす。
「・・・すみませーん。」
机が六つある二階建ての宿屋で、俺の他に客が十人食事をしている。
一応客がいるのだが、こうして新の客が来たというのに宿の人間は顔を出しもしない。
「お~い、客が来たぞ~!」
リーン、リーン、リーン、
呼鈴をしつこく鳴らし、騒ぐ。
二十代といっても良い年頃だが、まだまだ幼さがある。
「食い物をくれぇ~!早くしないと餓え死ぬぅぅ~!」
「・・・静かにできないのか?うるさくてたまらないよ。」
俺の度重なる催促にようやく奥の暖簾から出て来たのは左目に眼帯をつけた三十代前半と思われる筋肉質な親父だった。
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