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ダラダラと片付けを進めて机の上はきれいになってきた。えらいぞ私。
屈んで覗きこんだ机の下に光るものを見つけた。引っ張り出してみると、透明のプラスチックに入ったオルゴールだった。
「わ、懐かしい…」
思わず声が出た。これは小学校の卒業製作で作ったオルゴールだ。五年前、になるのかな。
飾りのない、オルゴールだった。必要最低限の部品しかない。可愛いげのないシンプルな作り。素っ気なくてつまらなくて。
下手に飾り付けてからかわれるのが嫌だから『私らしい』のを作った、 つもりだった。
なんかなぁ。
しっくりこない。五年前もそう思って創作の手を止めたっけ。
コトリ、と机の上に寂しいオルゴールを置いた。私の視界に白い花が映った。
白色の花をひとつ、つまみ上げた。ちょっとの間眺めて、オルゴールの上に置いた。
ひとつ、またひとつ。
プラスチックのオルゴールは造花に彩られていく。乗りきらない花は机を彩り、私の髪、腕を彩り。
夢中だった。楽しかった。
袋が空になって、はたと気がついた。何やってるんだろ。自分で笑ってしまう。
机の前のガラス窓に映る自分が見えた。花に囲まれた女の子が穏やかに笑っていた。
オルゴールのネジを回す。金属の板が弾かれてポロン、ポロンと音が流れる。固い金属が奏でる音は柔らかい。固くて柔らかい温もりの音。
もうちょっと、このままで。オルゴールが止まるまで。
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