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「桜が…綺麗になってきたね」
窓の外を見つめて
少女はぬいぐるみのくまに
どこか寂しげに笑いかける。
ここは入院患者の
とある一室。
16年前からこの病棟で
入退院を繰り返している
赤砂 桜(せき さくら)は
5月の陽気によく反射する
病室の壁を睨み付けるように
眩しさに目を細めていた。
桜は先天性の病で生まれつき
臓器の機能が著しく低い。
そのため、今まで
学校に通うことや
同世代とはしゃぐこと、
大声をだしたり走り回ったり
そんな普通なことを
したことがなかった。
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