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ただここ最近は
とても落ち着いていて
穏やかに過ごしている。
しかしそれは
喜ばしいことではなかった。
つい先日、担当医と母親が
話しているところを
聞いてしまったのだ。
――――――――…‥
桜がお昼寝から目が覚めて
母親を探している時だった。
近くを通った時、声が聞こえた。
『どういう、ことですか…?』
『ですから、最近の
穏やかな状況はあまり
喜ばしいことではないんです。
臓器の機能がもうほとんど
働けなくなっています。
しかし桜さんは生きたいがために
他で使うはずの余力を
無意識の内に臓器へ
働かせています。
今の状況は良好というより…』
『最悪ってことですか…?』
『はい…。
ここ1週間が山場かと…。』
『そんな…先生っ!!
なんとかならないんですか!?
ドナーとか、抗生物質とか…』
『やめて、お母さん。』
『桜…!?』
『しょうがないよ、
ドナーがいても私の体が
待ってくれないんだから。
わたしなら、大丈夫だから。』
―――――――…‥
あの後、呼び止める声を無視して
病院の近くの公園に行った。
なんでか、涙が桜の
頬を伝うことはなかった。
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