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左右の木々の間から影が爪を振りかざして飛び出してきた。少女は爪をしゃがみかわし、続く爪を剣で払いのける。
返す刃で影を斬り伏せ、背後に来た影に蹴りを見舞う。
「こっの!!」
森の闇に鉄の高鳴りが響き、火花が舞い踊る。
紙一重で爪の斬撃をかわしてきた少女の肩や頬は切り傷が出来ている。その痛みに少女は冷や汗をかき、下唇を噛む。
例えるなら、奴らの爪は死神の鎌だ。何重にも重なって襲い来る鎌がこの身体を貫けば一巻の終わりだ。
仮に、致命傷を防げたとしても、動きが鈍くなる。つまり、それは死に近づくということだ。
……囲まれる前に森を抜けないと!! 月明かりが届きにくい、こうも暗いと戦いにくい!
何度も暗い場所での戦いを切り抜けてきたが、それでも戦いにくさに慣れることはない。
少女は蹴りの勢いで振り向き、足のナイフを投げ出す。雪のように白く細い少女の指が一閃し、銀の光が一条走る。
闇に静かにストッと音が落ちた。影を射止めた音だ。
少女は影の最後を見届けることなく、亜麻色の髪をなびかせて走る。
……いったい、こいつらは何体いるのよ。倒しても倒しても沸いてきてキリがない!!
まるで、巣穴から湧き出るアリやハチのようだ。全く終わりが見えない、その自分の想像に戦慄した。
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