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再び数体の影が木々の間から現れる。少々は素早く剣を振り払い、爪を叩き下ろしてかわす。そのまま影の横を通り抜けながら、剣を一閃。
手に返る感触はない。まるで幻のようだ。
少女は影の間を縫うかのように駆け抜ける。
爪を振り上げる影の喉元に剣を突き込み、別から突き出された爪を紙一重でかわし、身を回して影の背に剣を叩き込む。
その瞬間、踵が石を踏んだ。転がる石で後ろへバランスを崩す。
……まずい!!
それを見計らっていたかのように、影が一斉に月光りの下へ現れた。木々の幹の間から、葉の中から、現れる影、影、影。地上はおろか、空中からも飛び出してきたそれは、恐ろしいほど同じ構えで爪を振りかざしている。
……間に合え!!
少女は咄嗟に叫ぶ。凛とした声が闇夜を貫いた。
「月に射抜かれろ!! ムーンレインッ!!」少女が尻をつく。
同時、夜空に浮かぶ月から、青白い光の矢が降り注ぐ。目にもとまらぬ速さで影を貫き、土に突き刺さって弾ける。弾けた光が雪のように淡く暗闇に溶けた。
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