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一瞬、義両親が私を連れ戻したのかと思ったがそれはないと確信する。あいつらがそんな事するはずがない。もともと私を邪魔者としか見ていない奴らなのだから。
だとしたらここは……背中越しに伝わる柔らかなベットの感触を惜しむように上半身を起こす。
キョロキョロと部屋を見回しても誇り人る目につかない事からこの部屋の主がかなりのきれい好きであろうことは容易に想像がついた。
「気がついたかしら」
不意に声をかけられたことで全身が飛び上がるほどに驚く。
離婚、母の死、虐待と来て今度は誘拐とは私の人生は呪われているのかもしれないと思いつつ声のした方へと首を動かした。
視界に飛び込んできたのは見滝原市一大きいであろう見滝原中学校の制服を着こなす綺麗な女性だった。フワフワと柔らかそうな神や大きな胸、常に微笑を絶やさない整った顔立ち。
その人にいつの間にか母を重ねて見ていることに気が付き慌てて目をそらした。
「あの、何が目的です? もし身代金目的の誘拐でしたら私では一円も振り込まれませんよ」
どこか棘のある言い方でその女生徒に投げかける。
「そんな事しないわ。あなたが公園で倒れていたから放おっておけなくて……家へと連れて帰って介抱していたのだけれど迷惑だったかしら? 」
そうか、私あのまま気を失って……。それじゃあこの人は本当にいい人なのかもしれない。
女生徒は続ける。
「私の名前は巴マミ。 あなたの名前も教えてくれるかしら」
ニコッと微笑み優しく喋る姿の奥に再び母を見た。
「わ、私は……神名あすみ ……です」
私が名乗るとマミさんは再びニコリと微笑む。
「あすみちゃん。 お父さんかお母さんの電話番号はわかるかしら? もう夜も遅いしこんな時間まで子供が帰ってこないと心配すると思うの」
天使の顔をした悪魔だったのだろうか……。
「……私、帰りたくない」
「ど、どうし……」
私の言葉に訝しげに問いかけようとしたマミさんは言葉の途中で口ごもってしまった。
そんなに私の顔は暗い表情をしていたのだろうか……。
「分かったわ。 でも、せめて理由くらいは教えてちょうだい。」
「…………」
話していいものだろうか。警察に電話などということになったらあいつらは世間体を気にして引き取るだろう。警察もそれを疑わず保護した私をあの地獄へと連れて行くに決まっている。
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