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確かに喋ったはずなのに、キュウべえの口は少しも動いていない。一瞬マミさんが私を元気づけるために腹話術をやっているのかと思ったが、焦っているマミさんを見るとそれは違うと理解できた。
再びキュウべえと名乗る謎生物が喋り出す。
「そんなことよりも、マミ、東の総合病院に魔女の結界が現れた。 まだ魔女は羽化していないけどそれも時間の問題だ。今すぐ向かって欲しい」
「分かったわ」
マミさんは一度私の方へと顔を戻して続けた。
「ごめんなさい、あすみさん。 わたしやることができてしまったの、少しの間留守番を頼んでもいいかしら」
「は、はい。 それは大丈夫ですけど……これは一体どう云う状況なんですか? 」
「ごめんなさい。 詳しいことは帰ってからゆっくり話すわ」
急いでマミさんは部屋を出ていってしまった。
一人残された私は、どうしていいかわからず立ち上がったままボーとしていた。
「神名あすみ、だね」
足元にいたはずのキュウべえはいつの間にかベランダの手すりに四本足で立っていた。
窓を開けベランダへと出る。
「あなたは何ものなの? 」
「僕はキュウべえ。 君たちの願いをなんでも一つだけ叶えてあげられる」
「本当なの? 」
「そうだよ。 その代償として魔法少女として一生魔女と戦うこととなるけどね」
「魔女……マミさんとあんたが話してる時にもそんな単語か出てたよね。 てことはマミさんはその、魔法少女……なの? 」
「そうだよ。 今、急いで魔女狩りへと向かっている。病院でもし魔女が出れば、多くの死者が出てしまうからね」
そんなことになるのに警察は動かないの……いや、警察だからこそ動かないんだ。
「…………」
「神名あすみ。言ってご覧君の願いはなんだい? 」
「私に願いなんてないわ」
「……こまったね。 そうだ、マミの戦いを見に行こう、そうすれば何か変わるかもしれないよ」
変われる……この人生を変えることができるのだろうか……。
「で、でも危険なんじゃ……」
「大丈夫。僕がついていれば危険はないよ」
「……分かった」
*
「キュウべえ、次どっち? 」
歩道を走りながら脇を走るキュウべえに次の道を聞く。
「次は左だ。 そしたら後は結界まで一本道だ」
道路を駆け抜け、結界へとたどり通ころにはもうヘトヘトだった。それでもマミさんのいる世界を知り、マミさんについてもっとよく知ることが出来ると思ったら疲れも気にならなくなっていた。
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