7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「ここからは僕が先を歩くから見失わないようについてきて」
頷き、キュウべえの後を追って壁に出来た結界へと潜り込んだ。
結界の中は不気味だった。時々聞こえる笑い声に耳をふさいで逃げ去りたい衝動に駆られるも、それを理性で抑えこんで奥へと進む。不意にキュウべえが足を止めた。
「どうしたの、キュウべえ」
「このドアの先がボス部屋だ。きっとこの中にマミはいるだろうね。 さあ、開けてご覧」
二歩前へ進み両開きのドアを押した。
ギギッという音とともにゆっくりと開くドアの隙間から黄色い衣装を身につけ、無数のマスケット銃を自在に操るマミさんの姿を見つけた。そしてマミさんに相対するようにキャンディのような魔女が銃弾をすばしっこく避けているのも見える。
キャンディのような魔女から視線をマミさんへと移すと丁度天高く飛翔した時だった。
そして、どこからともなく現れた黄色いリボンが大きな銃を作り上げていく。
「ティロ・フィナーレ!!」
マミさんの掛け声とともに特大の銃口から放たれた熱線がキャンディのような魔女へと直撃した。
「やったー。マミさん強い!」
爆音ともに巻き上がった煙が視界を白く濁らせた。
その中よりヌゥーと飛び出してきたのはナマズのような見たこともない生物。あれも魔女なのだろうか。だが、マミさんはそれにまだ気がついていない。完全に決着がついていると思い込んでいる。
「マミさん、あぶない!!」
その声にマミさんはようやく気がついたようだが、ひと足遅かった。
ナマズのような魔女が、巨大な口を開け放ちゾロリと並んだ凶悪な刃が今にもマミさんを食いちぎろうと迫っていたのだ。
目を見開いたマミさんは何も言わず首から上を食いちぎられた。
その時、あの公園の時のように目の前が真っ暗になりかけた。だが、今はマミさんの救出が先だ。
……助からないとわかっていても何もせずに諦めたくない。
魔女を無視して、ボス部屋内のマミさんの元へと駆ける。だが、その惨状を見た時何も言えなくなった。応急処置も救出もへったくれもない。すでに絶命していることは誰の目にも明らかだった。
首から上がなくなった無残なマミさんの姿から目を背けた。
再び、ナマズのような魔女が空から大きな口を開いて飛びかかってくるのが見えた。だが、避ける気にならなかった。よけても無駄だと理解していたのもあるが、もうこの世界に生きる希望を見出せずにいたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!