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この”和峰”には、三人の剣道を学ぶ門下生が通っていた。
今、休憩している二人の片方はこの村の村長の孫。と俺。
名前は村長の孫が、タンヤ。俺は、リンシャ。二人とも短髪で、タンヤは羨ましい事に、背丈が大きく体つきも剣道をしているおかげで絞まった体をしている。一方、俺は背丈が小さく三、四歳ほど実年齢より幼く見られる始末だ。
もう一人は、半年程前にこの村から村長より旅をしろと言付かった為、村から出て行ってしまった。
実質、二人だけの為の武道場と言って良い。
「何時まで、剣道してりゃいいんだよ」
「マンネリ化してる。いい加減、その口癖こそ直したほうが良いんじゃないのか」
確かにタンヤの言う通りマンネリ化と言うか、口癖になっている。半年前に旅に出て行った同じ門下生を見送った後には一日十回前後くらいこのうわ言をタンヤに愚痴っていた。それくらい旅に出れる事に憧れていたからだ。
タンヤも呆れを通り越して最近は受け流している。
「でも大きな都市では、魔法や武器が新しくなってく中、俺たちだけこんな木で出来た刀もどき振ってたんじゃ絶対置いてかれるって」
「それも一理あるけど、俺は村長を継ぐ事が決まってるから」
「面白くねえな。もっと夢見て」
「昨日、空を飛ぶ夢なら見たけど」
「希望だよ。夢と言う名の希望」
体力がやや回復した俺はこの心に秘めている旅に出たい思いを伝えるが、これもタンヤに、はいはい希望希望と受け流された。
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