遊泳空想

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「いいですか、聞いてもらっても」 「いいよ」 俺は深呼吸をした。 「俺は高校卒業した後、親の反対を押しきって上京しました。 上京して、仕事をやりこなせていたわけでもなく。 それが苛立ちにもなって、がむしゃらに働いていました。 もちろん、親には住所も教えていませんでした。誰にも。 しばらくして、4年くらい前です。 生活に慣れてきて、久しぶりに帰ってきたんです。 実は、上京するとき、知り合いに会って、その子から励ましというか……今思えば、上京を認めてくれた唯一の人で。 その人に会いに行こうかなと」 上手く話せているだろうか。 男は口を挟むことなく、風に揺れる向日葵を見ている。 「そしたら……あの子はもういない。って。3年前に、病気で、死んだと。 俺は何をしていたんだろうと思いました。 自分の生活のことで奮闘して、半ばがむしゃらになっていた頃、その子は病気で苦しんでいたらしいんです。 しかも、それは突然のことではなく、持病のようなものだったと聞いて言葉も出ませんでした。 その子と普段から一緒にいることも多かったのに、気づいていませんでした。 その子は最期のとき、俺に話したいことがあると言っていたらしいんです。 俺は本当に何をしていたんでしょう。 あの子の最後の話も聞いてやれなかった」 そして、シミズが死んだと聞いた翌日、シミズから貰った葉っぱがなくなっていた。
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