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それから俺は、シミズの死を知った日にちに帰ってくることに決めた。
理由は墓参りもあるけれど、親の様子も心配だからだ。
俺は親と和解し、何とか過ごしている。
たまに口煩いが、それも俺を心配してだとわかっているから以前のように煩わしくはない。
シミズが言いたかったこと、それが何なのか、俺にはいつもその疑問が残っていた。
「その子はきっと今も、君のことを心配しているだろうね」
「……え?」
男は柔らかい笑みを浮かべた。
「立ち止まってはいけないと思う。その悔いのみに執着しないほうがいい。
君はその悔いを自分で重くしすぎではないかい?
その子が言いたかったことは、私にわからないが、君を苦しめるようなことを言うとは思わない。
案外、そう深刻なことではなかったかもしれないよ。
『向日葵が好きだ』とか。あくまで私の考えだが」
自分で後悔を重くしすぎていた……のだろうか。
でもシミズは、少し変わっていたから、最期だって、不思議なことを言うはすだ。
それは……重要なこととは、限らないのか?
「さて、悩みたまえよ。若い内に」
男はそう言うと鞄を持ち、歩き始めた。
「え?あの!」
もう行ってしまうのかと呼び止めた。
「何かね?」
振り返った男は首を傾げる。
「えっと……名前を教えてください」
行かないでとも言えず、名前を聞いた。
「ふむ……そうだね。教授とでも言っておこう」
教授……?
名前じゃない答えに呆気にとられていると、男……いや、教授は颯爽と行ってしまった。
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