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しかしどこか、何かが違う。違和感は沢山あり、そのどれもが目の前のこいつらはドラキュラではないと告げている。そして容易に捻り殺すことも可能だと確信する。
落下した男は確かに南部へとダメージを与えた。しかし男は落下と跳躍の衝撃で両足が変形し膝立ち状態となり、二番目の男は刀を引き抜いたことで右手が使い物にならなくなり、地中から出た手を振りほどくと五本の指は全て折れていた。
そして暫く立つと最初の男同様、呻きのような叫び声を上げだす。それはさながらただの人間。南部は駆け足で城へと突入することを決めた。
白基調のととのった内装に、夥しい数のテーブルやイス。そこには物言わぬ若い男女が何組も何組も腰掛けていた。こちらにまるで気付いていないかのようにただ静かに座り続ける男女達。
それを無視して進んでいくと、一人の男が女性の首筋にキスをしているのが目に入る。
それがドラキュラであるということは、南部には瞬時かつ直感的に理解できた。
「お前がドラキュラだな」
「君はなんでそんなに強いんだい。今までこの庭をそんなにも平然と抜けてきた男は居なかったはずなんだが」
ドラキュラは女性の首筋から口を離して南部へと疑問を投げた。しかしそれには答えず南部は自分の質問を投げ掛ける。
「庭の奴等はお前の能力か?」
「明答だね」
能力次第で生かすか殺すかを南部は考えている。お前の処遇を決めたい、能力を説明しろ。そう告げるとドラキュラは怒りの気色を見せるでなく子どものような喜色を見せてこう答えた。
「まさか君は、僕の同類かい?」
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