4人が本棚に入れています
本棚に追加
「自分のことを好色家だとは思わないな」
南部は鼻で笑い同類であることを否定する。ウィットに飛んだ返しはどうやらドラキュラを満足させることはなかったらしい。返答は言葉よりも速い掌打。南部は辛うじて威力を殺すもその勢いで大きく後ろへと反れる。
「ほら、やっぱり、同類じゃないか」
地面を蹴る足に力を込めれば、床板が折れる。そのまま反動の力を用いてドラキュラへと突撃。対するドラキュラは、ただ掌を上から下へと押し込むようにするのみで南部の上半身を地面と平行にさせた。つまり地面へと叩き潰されたことになる南部はそのまま腕の力で後ろへ宙返りをするようにして間合いを取り直す。
気を抜いた訳ではないのだが、急に体の自由が奪われる。先ほど首筋に接吻をされていた女性が彼の胴に腕を回していたのだ。
「ILを操る能力か?」
「なんだい、ILって」
その返答は南部に衝撃をもたらした。辺境の地にあるだろう南部の古巣の村でさえ、IL(アイエル)に関する知識は常識的なものであった。それよりも大きな街に住むものがなぜIL(イリーガルライセンス)について何も知らないのであろうか。
「俺とかお前のことだよ」
南部は刀を抜いた。
「俺はILが嫌いだ」
「僕は理由なく自分を嫌うものを嫌う」
ドラキュラは南部を掴んでいた女性を自分の元へと呼び寄せ、再び首元に口を寄せた。
「お前を倒す」
二人の言葉が重なった。
最初のコメントを投稿しよう!