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冷静に煮えたぎる彼の心。うねる心の焔が自らの枷とならないように、南部はすぐに本拠地へと乗り込むことなどせずに情報収集を再会する。
日が沈むともはや、人影など存在しなかった。しばらくともせず闇に同化した陰気な酒場を発見したのは、きっと偶然であろう。
酒気濃い者は多いのに、騒ぎ立てる者は皆無と言っていい。これまた、傷んだ布を纏った人々ばかりが目に入り、生気はまるで感じられない。
「ドラキュラについて教えろ」
汚い椅子のうちのひとつに腰掛けて眼前の中年に尋ねる。この時、この街にはやけに中年男性が多いことに南部は気付いた。
「やめろ」
酒で軽くなった口からもその程度の情報しか漏れてこない。南部は少し思索した後、こう告げる。
「娘の仇を取ってやる。この街とドラキュラについて知っている限りのことを教えろ」
探りを入れるように提案する。その発言を耳にすると、その男性は一瞬固まった。
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