《ハジマリ》

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 既に気付いている人もいると思うが、彼ーー東堂 和久(とうどう かずひさ)は、私の恋人であり上司だ。実年齢の三十一歳よりは、かなり若く見える。  シュッとした切れ目に、鼻筋の通った高い鼻。艶のあるストレートの黒髪は襟足まであり、小麦色の肌はとても綺麗である。程よく鍛えられ、筋肉のついた身体には所々に傷跡が残っている。切り傷の様なものや、火傷の様なものなど様々だが、痛々しさが滲み出てくるようだ。 「なぁ? 聖、丸見えだぞ?」 (……え?)  東堂さんに見惚れていた私は、その言葉で我に帰る。東堂さんは人差し指であるものを指差した。私は、恐る恐る東堂さんの指を辿り、ソレを見た。 「っ……やだあ!」  子どもみたいな叫び声を上げる私を見て、東堂さんはクスクスと笑った。一方の私は、ミノムシの様に毛布を身体に巻き付け、赤面する顔で東堂さんを見た。  東堂さんは相変わらず笑っている。 「なっ、何で見るんですか! 最低、変態!」  その辺にあった枕や毛布を東堂さんに投げつけたが、私の攻撃はあっさり避けられた。
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