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「冬葉や」
「なに? ばあちゃん」
夏真っ盛り。お盆。
俺たち一家は田舎の祖母の家に里帰りしていた。
そこでばあちゃんが作った西瓜を食べたり、ばあちゃん特製の竹で作った昔ながらの水鉄砲で姉に水をぶっかけられたりしながら、のんびりと時を過ごしていた。
そしてそんなある日、縁側に座って水を張った桶に足を入れて涼んでいると、隣にばあちゃんが座り、話しかけてきた。
「なに、冬葉に御守りをあげようと思ってね」
「御守り?」
「そう。御守り」
そう言ってばあちゃんは着物の袖から小さな巾着袋を取り出した。その巾着袋の色は綺麗な若草色をしていた。
「これを、冬葉に」
ばあちゃんは俺の手を取り、そっと手のひらに乗せ、握らせた。
「これ、どんな御守りなの?」
「うーん……そうだねぇ……」
ばあちゃんは顎に人差し指を添え、空を仰いでどう説明しようか悩んでいるようだった。
俺もつられて空を仰ぐ。
青くどこまでも澄んだ空に、入道雲がもくもくとそびえたっていた。
そんな広い空にはミーンミーンと残り少ない命を燃やしきるかのような蝉時雨が響き渡っている。
なんだか、心が空に吸い込まれそうな気がした。
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