ステップ0・彼の理想

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  「それは光栄だが……。もう少し無いか? ……変化的な」 俺としても、高校でも円と過ごすのは確定している。 ――勿論、円が嫌がってないことが前提条件だが。 だが、それでは何も円に返せないのだ。 俺が円の優しさに甘えているだけの生活は、中学校まででいい。 だから、聞きたいのだ。 円の希望を。 円の理想を。 己の高校生活を代償にして、それを叶えた時こそ、俺は円への恩返しを果たせるのだから。 「変化? うーん……。新しい友達が出来ると良いよね」 ふぅむ、友達ね……。 「具体的に、どんな人間が良いとかあるか? 胸がデカい女とか、ツンデレ女とか、メガネかけた女とか」 「なんで女の子限定?」 「取っ替え引っ替えするためだろ?」 「冗談は置いといたんじゃないの!?」 ダメだ、円弄るの面白いわぁ。 ま、程々にしないとな。自重、自重。 「で、どんなヤツがいいんだ?」 真面目に聞くと、円は呆れ顔。 「どんな人柄だとか、生い立ちとか、容姿は関係無いでしょ?」 相変わらずのお人好し発言。 当たり前みたいに言ってるけど、今時こういう考え方をするヤツの方が稀有だろ。 ……まぁ、こういう男だから、俺なんかと親友でいてくれるんだろうけどな。 思わず笑ってしまう。 「……僕、そんなにおかしなこと言った?」 少しばかり怒気を孕んだ視線が、俺に突き刺さってるんだが。 どうやら、正しいと思ってる事を笑われたと感じたらしい。 「いや、違う違う。やっぱりお前ってスゴいヤツだな、と思ってな」  
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