ステップ0・彼の理想

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  しかし、これは中々に難しい要望だな……。 一つ目の案件、「友達が欲しい」は苦もなく達成できるだろう。俺が何かしなくても、円の人柄さえあれば、クラスどころか学校丸ごと友達にできる。 友達百人云々も夢ではない。 問題なのは二つ目だ。 円が欲する物なら、どんな事を手に入れてやる覚悟もある。 彼女が欲しいと言うのならば、それに相応しい人物を連れてきてやる。 しかし、そこからは完全に円次第なのだ。 俺がいくら彼女候補を斡旋――言い方は悪いかもしれないが――しようが、コイツの気持ちが傾かなければ、恋人なんて出来やしない。 少しでもコイツの好みに合った相手を引き合わせてやりたいが、その手の質問をぶつけたところで、友達の時の解答が返ってくるのは明白だ。 手がかりは無し。暗中模索とはこの事か。 さて、どうしたもんかね。 「……どうしたの? 額に皺寄せて。何か考え事?」 心配そうに、俺の顔を覗き込んでくる円。男相手にそういう行動はやめてくれ。 「ああ、中々に厄介な問題があってな」 「手伝おうか?」 こっちが困っていると見れば、すぐさま手を差し伸べてきやがる。まったく、この主人公様は……。 「いや、いい。気持ちだけ受け取っとくわ」 お前の事だから手伝えないし、何よりコレは俺がしなけりゃならない事だしな。  
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