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「そう、戦争の才能というものは平時には見出しにくい才能です。現に通常の戦略や戦術理論の講義では取り立てての成績を彼は残していない。
しかし、二次大戦のフィンランドで、圧倒的強国であるソ連の侵攻から祖国を救う際に最も才能を発揮したのは、戦前まで小学校の校長をしていた前線指揮官ですからな。我々はそうした才能を発掘するのも、国防の一環として重要と考えております」
「・・分かりました。その点については異論はありません。今後の彼について注視していきます。しかしやはり特別扱いはしません。すべては彼自身の成長に掛かっていますことをお忘れなく」
「承知しております。我々も彼に戦術特別研究班への参加を強要しなかったのは、彼自身の成長を望んでのことです。馬を水辺に引っ張っていくことはできても、無理やり水を飲ませることはできませんからな」
そう言って戦術主任教官は、一定の合意を得られたことに満足の笑みを浮かべた。
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