月のない夜

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「姉ちゃん」 月のない夜、暗闇に紛れて、私の顔に影ができる。 影を作っているのは、星の明かりと……私の弟。 弟? さっきまで弟だった彼は、今、私の知らない表情をしている。 熱の籠った瞳。 それを、姉である私に向けるのは間違ってるわ。 そうでしょう? そんな苦しそうな表情も見たくない。 いつも笑っててほしいの。 何度も、そう伝えたじゃない。 いつもなら、悲しい顔をするなら、それが見えないように抱き締めた。 でも、今はそれができない。 彼に、伸ばしたい腕をベッドに押さえられているから。 どうして、こんなことするの…? 切ないよ。 寂しいよ。 抱き締めたいよ。 それなのに。 ――私、おかしい。 彼の表情が見たくないから、抱き締めたいのに。 その瞳を見ると、私の胸が甘く疼くの。 抱き締めてほしくなるの。 私、おかしいよ……。
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