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いつからか、その人物はここに通うようになっていた。
もう、30年ほど前からかもしれない。
その人はいつものように、この、本の森のはしで本を読んでいた。
ページをめくる音、人の足音、ときどきピッという機会音と誰かの声が聞こえるだけの本の森をその人は気にいったようである。
だから、その日もいつものようにその人はそこにいた。
一番奥の棚の端の方におかれた椅子に座り、ただ、ページをめくっていた。
はじめ、その人がいるのは夕方から夜までであった。
けれど、しばらく前からはその人は朝から夜まで本の森にいた。
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