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……連れてこないほうが良かったんだろうか?
こんなあてもない、死に場所を探すような旅には。
天幕の外には今も『虹』が輝いている。
日が沈んでも『虹』は消えはしない。
消えないそれはあの灰色の街からも見えた。
人の背丈ほどかと思われたそれは、近づいた今、その袂がどこなのかわからないほどに大きい。
本当に天弓の国なんてものがあるなら、俺達がそこへたどり着けたなら……。
しんしんと冷え、凍えていく夜をすぐ傍に感じながら俺は目を閉じた。
灰色の街とは違う、腐臭のしない風が吹いてくる。
あそこに残してきた奴らは、もう俺たちのことなど覚えてはいないんだろう。
いなくなった者の追憶に身をゆだねて生きていけるほど、あの街は甘くはないから。
そんなことを考えているうちに、俺の意識は闇の中へ堕ちていった。
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