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そして、少女は唄い出す。 希望の唄を。 終わりの唄を。 そのか細い喉から発せられる美しい戦慄は丘を包み込むように広がってゆく。 そんな、一人の少女を 数え切れないほどの沢山の瞳がただ、見つめていた。 全てが無表情の瞳から、塩味の、生暖かい水がこぼれ出す。 集まる瞳達は皆泣いていた。 それに気付いた、一人。 違和感を指で掬い上げて舐めとる。 しょっぱい風味が広がるのを感じると、それはまた なみだ を流し始めた。 どうして、 なみだ が流れているのだ。 その様子を見たもう一人、 またもう一人。 舐めて不思議な味を確かめ、また なみだ を流していった。 無表情のままで、泣いていた。 少女もまた、泣いていた。 唄うために一生懸命に開いた口に容赦なく入り込む、 なみだ。 少女は泣きながら、笑っていた。 やがて 唄は 美しい終わりへと向かう。 やがて丘に、軍帽を被った屈強な男達が現れた。 それらは沢山の瞳と少女を一瞥する。 銃を、 構えた。 ぱん。 軽い銃声と共に、一人の瞳が閉じた。 ぱん。ぱん。 ぱんぱんぱん。 また一人。 また一人。 閉じてゆく瞳からはこぼれる、水。 死してゆく瞳達を 少女は 唄い続ける 続ける うたは うそを つかない 本物の あいを ゆめを きぼう を ぜつぼうも かなしみも さよなら も ありがとうを 伝えたい。 少女はまだ唄い続ける。 やさしさにみちたうたを
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