物語

2/4
前へ
/7ページ
次へ
花が添えられた果物カゴの中には 摘み取ったばかりの新鮮な林檎が所狭しと詰められていた。 編み込みで出来ているそのカゴを 少女が持ち上げようとすると 底の方が撓み、今にも林檎がはみ出してしまいそうになる。 それを防ぐために カゴの底を片手で一生懸命に抑える。 これまた編み込みで出来た麦わら帽子を、くいっと傾けて立ち上がる。 衣類に付いた土を払う。 一仕事を終えて、沢山の汗が流れているのに気付いた。 口にまで流れ込んできたそれを 舌で一舐めする。 当たり前なその味に、首を傾げた。 木々の木漏れ日から 暖かい春を感じることができる。 巣をつくっている大人のツバメは、 鳴きながら何度も何度も森中を行き交う。 その、羽根が木の葉に当たる音に 耳を傾けながら。 少女が唄を唄い出した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加