桜の木の下で…

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桜の木の下で…

春… 二人は桜の木の下で横たわっていつものように、空を見上げていた。 「海人…」 「うん?」 「ずっとこうして海人の傍にいたい」 「僕も…四宮といたいよ」 海人はにっこりといつものように微笑んだ。 「違う…私は…私はずっと…貴方が好きでした。友達としてじゃなく…恋人になって欲しい」 四宮の告白に海人は目を伏せた。 ずっと好きだったのは自分の方…ずっとずっと小さい頃から四宮だけを見てきた。 四宮の言葉が胸を締め付ける。 海人は瞳に涙を浮かべた。 「急にそんなこと言われても焦りますよね…でももう隠したくなかったから、海人愛しています」 気づいていたよ…四宮の想いも、同じものだと…それでも自分は…海人は小さく首を横に振った。 長い沈黙の後四宮は悲しそうな瞳で海人を見つめた。 海人もまた四宮を見つめた。 「それが…貴方の答えなのですね」 海人は小さく頷いた。本当は四宮の腕に抱きつきたかった、自分も四宮が好きだと告げたかった。 だけど海人にはそれが出来なかった。 「海人…傍にいるくらいならいい?海人が困るなら私は…」 海人の胸が張り裂けそうな程に苦しくなる。そして気づいた時には自分から四宮の腕の中に飛び込んでいた。 「海人…」 「お願い何も言わないで…今だけ…ほんの少しだけ…ここにいさせて…」 四宮は海人の身体を優しく抱き寄せた。海人もまたその腕の中そっと四宮に身体を預けた。 それから触れるだけのキス。 海人は瞳から止めどなく流れる涙をこぼした。大好きな人とのキス。 もう何もいらない。海人はゆっくり瞳を閉じた。 それからまもなくして海人は四宮の傍から姿を消した。 海人はどこをさがしても見つからなかった。 まるで今までの時間が幻だったかのように… こうして二人の初恋は終わりを告げた。 数年後…また出会うことになるまでは…
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