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「なんだ、宅配便か………?」
無視だ、いいから無視しろ自分。
今こそ居留守を使うんだ。
悪魔な自分が頭上で囁く。
このタイミングでインターホンを鳴らすような空気の読めない宅配便など、宅配便の風上にもおけやしない。
…だから、出る必要など無いだろう?
至極自分勝手な理由ではあるが、眠気が極限の私にはその悪魔に対抗できるはずもなく。
「ふん、誰が出るものか」
そう再びひとりごちてからがばりと布団に潜りこんだ。
私は絶対に出てやらないからな。
私は今から寝るんだからな。
「…おやすみ」
全てを仕切り直して心地よい夢の世界へ再度旅立つ。
…はずだった。
ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん……と、それはそれはご丁寧に、安眠を邪魔するインターホンの音が今度は3回連続で鳴ったのだ。
「3回…だと?」
ぶちり、と自分の頭のなにかがきれた音がその場に響く。
なにが切れたのかなんて言わずもがな、堪忍袋の緒に決まってる。
いくらなんでも3回もインターホンを鳴らすことはないだろう。
「…宅配便め、」
そう忌々しく口にしてから布団から俊敏な動きでがばりと起き上がると、どたばたと玄関へつながる廊下を足音荒く歩く。
そして、がっと玄関の扉を壊れんばかりの勢いで開けた。
「留守だといっているだろうが…!」
その流れのままに怒りにまかせてそう宣言し…
…あ。
もしかしてもしかすると自分は何かやらかしたかもしれない…?
だが時すでに遅く、後悔先に立たずとはよくいったものだとひどく感心した。
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