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…あぁ、やってしまった。
相手の男は肩を揺らしながらクスクス笑い、時折こちらをチラチラ見てくる。
視線を痛いほどに感じるのだが、やめてくれないだろうか。
そして笑うならもっとおおっぴらに笑ってくれた方がこちらとしても助かるのだが。
あぁ、恐らく彼は私のことを奇妙な生物とでも認識してしまったに違いない。
…もうなにもかもがめんどくさくなってきたのは、決して気のせいなどではないだろう。
そもそも私は、面倒事が一番嫌いなのだ。
…ふ、まったく。
今日はほんとにとんだ災難だな。
朝の馬鹿父からの電話はいつも通りだわ馬鹿父は馬鹿だわ居留守はバレるわ…
ーーすべて、なかったことにしてしまえ。
どうやら私の情けない脳みそはそう結論をだしたらしい。
そうと決まればすぐさま実行に移そう。
一度決めたことは死んでもやり抜けと母さんからも言われているしな。
「…すまないが失礼させていただく」
さあ、現実逃避への扉をしめ
「ちょっと待ちなよ」
られなかっただと…?
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