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ーー……
爽やかな昼休み。
一人の少女が中庭で浮かない顔をしている。
……ーー
「…………」
あたし、川西 英恵(かわにし はなえ)。
長いポニーテールがチャームポイントの元気印の高三。
只今、今日返ってきたテストの答案用紙と睨めっこ中。
『物理、5点』
後悔先に立たずとはこの事よね。
「あ~。
こんなのみっちゃんが知ったら……」
「こりゃ、ひでぇな。
どうしたらこんな風になるんだ?」
「……ってなるんだろうな。
み、み、みっちゃん!」
振り返るとあたしの後ろに一人の青年が立ち、答案用紙を覗いていた。
彼の名前は箸元 岬(はしもと みさき)。
数学担当兼担任。
長身で細身。
インテリ眼鏡がよく似合うイケメン。
若くて頼りないとこもあるけど、歳が近いせいか生徒達からは人気のある先生だ。
「英恵は受験生だし、暫くはデートお預けだな」
そう。
あたしと岬先生は恋仲。
元々幼なじみでそれが発展したようなモンだけど……。
てか、今めっちゃショックな言葉が……。
「がーん」
岬先生の言葉にあたしは肩を落とした。
「はな~!
あ、岬先生」
遠くから一人の少年がやって来た。
岬先生に気づきハッとした表情を浮かべる。
「よっ!
柾!」
岬先生は呑気な手を挙げた。
何となく岬先生に似ている小柄な彼は箸元 柾(はしもと まさき)。
クラスメート兼幼なじみ兼親友。
そして岬先生の弟。
「どうしたの?
まっちゃん?」
柾が複雑な表情をしていてあたしは気になった。
「これ、落ちてたよ」
柾はあたしにそっと何かを手渡した。
「こ、これは!」
受け取ったものをみてあたしは顔から火が出そうになった。
「0点の答案用紙……」
ボソリと岬先生は呟いた。
「何か知らんが廊下で晒しものになってたぜ」
頭をポリポリとかいて柾は首を傾げた。
「あーん、まっちゃ~ん。
タイミングワロス!」
あたしは柾に泣きつく。
何が何かわからず柾はきょとんとしている。
「これは酷いな。
確か俺の教科も20点だったよな」
答案用紙に穴があくんじゃないかと思うくらい見つめながら岬先生は険しい表情を浮かべる。
「あれは良い方だよ~」
ぷぅっと頬をふくらませあたしは言い返す。
「複雑だな」
ボソリと柾が呟く。
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