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「まったく!あなたはどうしてそう俺を心配で殺そうとするんです?!心臓が止まるかと思った!」
「あはは。すいません。でも、前の時もそうだったんですか?確かにものすごい勢いで病室入ってきたけど。」
「何言ってるんですか!この前だって家で頭打って脳振とう起こしたのに。
それで記憶喪失になってるの忘れたんですか?!」
「はい?何のことですか??私が言ってるのは仕事中に機材の下敷きになった時のこと何ですけど……。」
「え……?」
「おや。」
何故か私の発言に固まる陽一さんと、ちょっと驚いている先生。
状況が分からない私も固まるしか無くて。
「か、楓さん、あなた記憶が戻って……?」
「陽一さんは私の記憶を無くさせたいんですか。」
「っ!ち、違います!まあできれば高木とかは忘れてくれても良いと思ってますけど!
そ、それじゃあちゃんと俺のことが分かるんですね?!」
「え、ええ。恐らく……うっ。」
ものすごく嬉しそうな顔をした陽一さんはガバッと抱きついてきた。
振動で頭が痛い私は呻く。
困って肩越しに先生を見ると、先生もちょっと笑ってる。
「立花さん、君ついさっきまで記憶喪失だったんだよ。家で頭打って。
他人だけを見事に忘れるって言う面白い忘れ方でね。」
「……なんという。」
「あはは。そうだよ。ということはさっきの強打で戻ったみたいだね。
ショック療法はあまりお勧めできないからしなかったけど、これはとんだ嬉しい誤算だね。」
「えっと、ちょっとまだよく状況が理解できてないんですけど。」
「ああ。さっきまで記憶喪失だったっていうのはいいかな。
で、しばらく入院していたんだけど、その際に子供が階段から落ちてね。
君はそれを助けたら壁に頭打ちつけて気絶ってわけ。」
「……どんくさいですね。」
「仕方ないよ。筋力落ちてたんじゃない?でもそのおかげで子供は無傷だし、君も記憶戻るし。良いこと尽くしだね。」
「はぁ。」
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