第一話~本能寺の変~

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室内に入った信長は辺りをキョロキョロと見 回している。 何かを探しているようだ。 蘭丸が不思議そうな信長を見ている。 「いるのだろう?出て参れ。」 突如出した信長の声に蘭丸はさらに混乱し た。 こんな場所に誰がいるのだ、と。 すると天井がみしみしと埃を上げながら音を 出した。 「えっ!?」 蘭丸がすっ頓狂な声を上げ天井を見上げた。 次の瞬間、天井の木の板が外れ、人が降りて 来たのである。 「く、曲者!!」 あまりの事に蘭丸が震えながら刀を構える。 「良いのだ。」 そんな蘭丸を信長が抑える。 黒装束に身を包んだ男は大柄だった。 見た感じ忍なのだろうが、こんな体格で忍が 務まるのかと思う程だ。 「良くここまで来れたな。」 「誠でござる。大殿が中国に行くと申すから わざわざ関東から護衛に来て見ればこの有り 様でござるからな。」 天下の信長に対し堂々たる口調である。 「御前であるぞ!口を慎め!」 蘭丸が無礼な男に吠える。 「うるさいよ、死にかけた小姓風情が威張るな。」 これに男の方も喧嘩腰で応える。
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