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「くっ…!」 蘭丸の端正な顔が返す言葉もなく悔しそうな 表情になる。
「ははは。蘭丸よ、この男に口で勝つのは無 理だ。最も武で勝つのも無理だろうがな。」
信長は二人のやりとりを見て笑顔になる。
「殿……。」
「ご苦労であったな。」 信長が男を労うと彼は黒頭巾を取り素顔を現 す。
「こ、この者は…!?」 今まで数多くの武将や忍を信長の傍で見て来 た蘭丸だがこの男だけは見た事がなかった。
「やはり蘭丸は知らぬか。まあ無理もあるま い。」
信長が語り出す。
「この男にはな、俺の護衛を頼んであり…… そして、俺の首が敵に取られそうになったら 敵よりも早くにこの首を取れ、と言ってあ る。それにな、この男は生きていながら死ん でいる身なのだ。」 つまり信長は例え死んでも敵に首は渡してな るものか、そんな心得でこの黒装束の男をい ざという時に控えさせて居たのである。
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