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戦国時代の真っ只中である織田家領土尾張清洲。 先の当主・織田信秀が逝去したばかりで心なしか普段より暗い陰を落としてい るように見える。
清洲の城門近くを一人とぼとぼと泣きながら歩いて来る幼い男の子がいた。 涙まみれの顔と着物は泥が付いて酷く汚れていた。 どうやら同世代の子供にいじめられたらしい。 嗚咽しながら歩く男の子だったがついに道の真ん中で膝を落とし大声を出して さらに泣き始めた。
しばらくすると城下町に続く道からド派手な着物を来ていながらも胸元が開 き、諸肌丸出しでだらしなく着こなしたボサボサ髪の若者の集団が馬に乗って 城の方向に向かって来る。 「んだぁ?」往来のど真ん中で泣き喚く子供に若者の一人が気付き近寄る。 「おい、童(わっぱ)!こんなとこで何泣いてんだ!?道のど真ん中で泣いてん じゃねえよ!」馬に乗ってなければ子供を蹴りそうな勢いで怒鳴る。他の者と は違いこの若者だけ、頭に女性が付ける髪飾りを差し、目元には赤い紅を塗っ ていた。物騒にも肩には槍をぶら下げている。 「おいコラ!ガキ!若様のお通りなんだよ!さっさと退けねえと叩ッ斬る ぞ!?」まだ幼い子供に対し散々に怒鳴りちらすこの紅の若者を制止するよう に集団から若者の一人が出て来た。 「お前の方がうるせェよ……、黙ってろ…。」男が低い声を出す。寝癖みたい な髪型で着ている着物は右肩だけ諸肌を出し、この集団の例に漏れずだらしな い格好の男だった。
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