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それから瞬く間に時が過ぎた。
1556年。慶次は15歳になり、身長は170センチを越えた大男になっていた。 幼い頃に見た信長の姿と一益の言った「他人とは違う事をしろ」の言葉が結び 付き、信長さながらのうつけぶりを発揮していた。
義父である利久は慶次を可愛いがっていたためその言動を諫める事はしなかっ た。
それこそ幼い心のまま育ったのである。
最も憧れの信長は当時のうつけ者の面影がほとんど消え、威厳ある大名になっ ていた。
もちろん利家もそれにより傾奇者と名を馳せた時代に別れを告げ、全うな家臣 として信長に仕えていた。
今、織田家は混乱の渦中にあった。
信秀の死から早五年が過ぎたものの、未だに信長が当主になった事に納得しな い家臣がいたのだ。
その家臣らが信長を廃して彼の弟である信行を当主の座に立たせようと画策し ていた。
その信行を支援しようとした大名が織田の縁者でもある織田信安。 そして、信長に反感を抱く家臣の筆頭が柴田勝家と林通勝だった。
二人の後押しもあり、信行はついに信長に対し反旗を翻した。
前田家の当主格である利久は、林通勝の派閥に所属していた。 その為、信行の陣に参加した。
一方、弟の利家は生粋の信長信者であるため当然、信長側についた。
慶次はというと元来、戦が苦手だった父に代わり信行方に参加する事になっ た。
ここに同じ一族でありながら二つに別れ戦うという悲しき戦が始まったのであ る。
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