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信行軍、陣中は通具の死により大いに混乱していた。
反撃を望む者、寝返る者、逃げる者、実に様々だった。
副将として控えていた柴田勝家は殿を買って出たが今は勝家を失う訳にはいか ない、と通勝に拒否された。
そこで殿に選ばれたのが前田家だった。
それなりの軍勢を率いており、しかも当主の利久が出陣していないのだから捨て駒にはピッタリだった。
早速、当主のいない前田の陣に早馬がやって来た。
この時前田の陣には慶次と、代理の大将を勤めていた前田安勝がいた。 安勝は利久の弟で利家の兄。慶次にとっては伯父に当たる。
殿の報せを聞いた安勝は顔を青ざめさせた。
それはそうだろう。 軍を撤退させる為に死んでくれ、そう言われたのだから無理もない。
だが、その隣で控える慶次は違った。 悲観するどころか笑みを浮かべている。
「慶次…!何故笑ってるんだ!!殿の命を受けたのは俺達なんだぞ!?死ねと 言われたのと同じなんだぞ!?」慶次の表情に気付いた安勝が半泣き状態で問 いただす。
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