第一章 ある魔法使いの入学式

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俺が謝った事で満足気なおじさんは、ベッドから降り、俺の隣に来ると机の上の調査報告書を覗きこんだ。 「……で、見てほしい課題ってのはこれか?」 「うん、調査報告書なんだけどさ。書いた事無いから勝手が解らなくて……一通り書いて見たけど、こんな感じで良いの?」 「どれどれ……。あー、これじゃ駄目だな。調査報告書ってのはもっと──」 調査報告書の書き方をすらすら説明していくおじさん。 その説明を理解した俺の頭脳が出した結論は、一言。 「思ってたより面倒臭い」 「そう言うなよ。これ、学園からの課題何だろ? なら、やっとかないとマズイんじゃねぇの?」 おじさんの言う通りこの調査報告書は、俺がこの春から入学する事になっている『国立魔法学園カリン・ウィザード』から、入学者全員に向けて出された課題なのだ。 因みに調査報告書は歴史の課題。他には数学や国語、魔法学やその他諸々と中々量は多い。 休暇中にも、勉学を怠らない様にという学園側の配慮らしいのだが……正直、余計なお世話だ。 かと言って課題を提出せずに学園生活を開始してしまうと、いきなり先生方に目を付けられてしまう。 もちろん、悪い意味で。 結局の所、やるしかないのである。 「はぁ……、夜食食って頑張るか……」 「そうしろそうしろ。じゃ、おじさんは寝るから。おやすみ」 「おやすみ」 一瞬、また俺のベッドに潜り込むんじゃないかと思いおじさんの行方を追うが、今回は素直に扉に向かっていた。 一安心して、夜食をお盆毎手前に引き寄せる。 「アレク」 すると、おじさんに呼び掛けられた。 扉の方を振り向くと、扉を開けた所で俺を見てニヤリと笑っているおじさんの姿が。 「頑張れよ」 それだけ言うとおじさんは部屋を出ていき、扉を閉めた。 廊下から聞こえるおじさんの足跡を聞きながら、夜食を頬張り、決意を新たにする。 ……頑張りますとも。
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